ワーグナー 「ニーベルングの指輪」第1日「ワルキューレ」

ワーグナー 「ニーベルングの指輪」第1日「ワルキューレ」

ワーグナー「ニーベルングの指輪」第1日「ワルキューレ」は,ワーグナーの全楽劇の中でも,特に好きな作品だ。

これまで,何度も生で見ているけれども,何度見ても感動を新たにしている。

バイエルン国立歌劇場,ズービンメーター指揮 「ワルキューレ」
この時は,歌劇場のストライキ中で大道具等がなく,随分簡素な舞台だった。

メトロポリタン歌劇場 ジェイムスレヴァイン指揮 「ワルキューレ」
プラシドドミンゴ,ジェイムスモリスと言った,大御所による重厚な舞台だった。

昨年は,
新国立劇場 飯守泰次郎音楽監督が指揮する「ワルキューレ」。
生で見たワルキューレの中では,これが一番気に入っている。

ウィーン国立歌劇場 アダムフィッシャー指揮「ワルキューレ」
オーケストラの美しさは,さすがウィーンフィルハーモニーの母体,ウィーン国立歌劇場管弦楽団だ。

昨年は,ワルキューレを2回も見ることができた,とても幸せな年だった。

10代から20代の頃は,とにもかくにも第1幕,ジークムントとジークリンデの,兄妹の破滅的で美しい愛の二重唱だった。
「Was je ich ersehnt,ersah ich in dir
    in dir fand ich,was je mir gefehlt!」
(これまでわたしが焦がれたものをあなたの内に見出し
 わたしに欠けていたものをあなたに見つけた)(意訳)

と言った,ふたつの人格が溶けてひとつになるような強烈な言葉と音楽に一番こころを奪われていた。

しかし,30代になり,娘ができると,ワルキューレの中でも,涙する場面は変わってくる。
主神ヴォータンが,自らの背いた愛娘ブリュンヒルデから,神性を剥奪しヴァルハラから追放し,眠りにつける。その周りに,真の英雄しか超えられない炎の壁を巡らせる。

最後に,ヴォータンは眠りにつけるブリュンヒルデに語り掛ける。
「ein brautliches Feuer soll dir nun brennnen wie nie einer Braut es gebrannt!」
「Denn einer nur freie die Braut,derfreier als ich,der Gott!」
(花嫁にふさわしい炎をお前のため燃やそう
 唯一,花嫁に求婚するのは,神である私よりも,自由な男)(意訳)

親になると,感動するところまで変わってくるのは,我ながら不思議な感覚だった。
自らの変化をも楽しめるのが,総合芸術の魅力のひとつだ。







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