新国立劇場【神々の黄昏】

ワーグナーの楽劇【ニーベルングの指輪】も、この【神々の黄昏】で最後を迎える。

飯守泰次郎オペラ芸術監督の、ニーベルングの指輪を心ゆくまで味わえたことは、これ以上ない幸せだった。
でも、もう一度、4夜16時間に及ぶ、この音楽劇を、飯守泰次郎監督の指揮で聴き通したい。

今回の神々の黄昏は、オーケストラも歌手も、当代最高峰の素晴らしいものだった。
オーケストラは、満を持してというべきか、読売日本交響楽団。
ジークフリートは、当代最高のヘルデンテノールである、ステファン・グールド。
ブリュンヒルデは、ペトラ・ラング。昨年のウィーン国立歌劇場の【ワルキューレ】でジークリンデを歌った。
何より嬉しかったのが、ヴァルトラウテを歌った、ヴァルトラウト・マイアー。
僕が、まだ青春だった頃、ユースホステルに泊まって、ヨーロッパのオペラハウスを旅をして、一番安いチケットを買っては観劇していた時、よく見た。
ズービン・メーター指揮のバイエルン国立歌劇場で観た【ワルキューレ】のジークリンデ、ダニエル・バレンボイム指揮のベルリン国立歌劇場で観た【トリスタンとイゾルデ】のイゾルデ。

「ワーグナーの音楽は、これまで何らかの形で禁じられていたものの 放埓な言明であり、それゆえ、我々が皆心の奥で望みながら現実の世界ではいきることのでき ない、情動の赴くままの生―我々のもっとも情熱的な欲望やその表現が制限されることのない 生、情動が好き勝手振る舞えばこうもあろうかと思われる生―を与えてくれる、ということで ある。ワーグナーの音楽の魅力は実人生では決してかなわない我々のもっとも内なる願いを、芸術 と言う形で叶えてくれる点にある。それゆえにこそ、ワーグナーの音楽には可能性の限界を超え、聴く者の意識を拡張してくれるように思われる。」(ブライアンマギー「ワーグナーとは何か」)

【神々の黄昏】の終末で奏でられる、軋みをあげて荒れ狂うオーケストラ、自分と共に世界を燃やし尽くす音楽。焼き尽くされた世界に奏でられる、控えめな、「愛と救済」の旋律、、、、、、。

いつまでも、いつまでも、いつまでも劇場の只中で聴き続けていたい。





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