公文書改ざんは犯罪か?

森友問題で話題となっている「公文書改ざん」は、果たして犯罪か?

実態として一番しっくりくるのは、財務省(行政)が、国会(立法)に資料を提出するに際して、決済文書の証拠価値を改変したと言う捉え方だ。
改ざん前と改ざん後では、明らかに文書の証拠価値(国会の立法その他の判断資料としての価値)が異なっている。

しかし、上記類型の行為を処罰する証拠偽造罪変造罪(刑法104条)は、「他人の刑事事件」に関する証拠が対象であるため、例えば「大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件」のように、検察官が裁判所(司法)の判断資料の証拠価値を改変すれば証拠偽造罪は成立するが、財務省が国会(立法)の判断資料を改変しても証拠偽造罪は成立しない。

(参考:大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件)

公文書偽造罪変造罪(刑法155条)も、報道等で得た情報を前提とする限り成立する可能性が高いとは言えない。これらの罪は、当該公文書作成の権限がない者が勝手に公文書を作る場合に成立する罪だからだ。
報道等によれば、今回の件は、決済権者も関与していた可能性がある。

虚偽公文書作成罪(刑法156条)はどうだろうか?
この罪は、当該公文書を作成する権限がある者が内容虚偽の公文書を作成することにより成立する。
しかし、決済文書としてみた場合、特例的なことが記載され特例的に決済されているとすれば「虚偽公文書」でも何でもない。

一方、決済文書を決済文書としてではなく、国会の「資料提供文書」としてみた場合、資料が虚偽であったと言う意味で「虚偽公文書」と見る余地はあるのかもしれない。

しかしこのような見方は、限りなく本件を証拠偽造罪変造罪に近づけて見ることになる。

そうすると、それでは証拠偽造罪変造罪が「他人の刑事事件」に限定されていることとの整合性に疑問なしとしない。

少なくとも僕が弁護人なら無罪を主張する。
罪刑法定主義の見地からは、たとえどんなに悪いことであっても事前に罪と刑が法定されていなければ、罪に問うことは許されないからだ。

それとも公用文書毀棄(刑法258条)だろうか?
記載文言の抹消をもって「毀棄」とすれば、もしかしたら可能性はあるのかもしれない。
(最高裁昭和381224日)

大阪地検特捜部が本件を立件するのかしないのか、立件するとしてどのような犯罪でいくのか興味は尽きない。

しかし、本件は,本質的には,政治問題であり,立法の問題であるのだろう。

なお、本件は「公文書」に限定された問題ではないように思う。
国会が法律を作る際に私文書なども当然立法の判断資料、参考資料となるのであり、それらを何人かが事後的に改ざんして国会に提出することが、立法のプロセスを捻じ曲げる可能性がある点は同じだからだ(公共事業関連の法律で下請契約の実態を把握する場合に下請孫請業者間の契約書=私文書を出させる場合など)。


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