旧長銀事件(最高裁平成17年(あ)第1716号,同20年4月18日第二小法廷判決)と, その事件で補足意見の書いた古田佑紀最高裁判事(当時)と,弁護士・公認会計士が書いた「法律家のための企業会計と法の基礎知識 会計処理と法の判断」 を,仕事の必要に迫られて読む。 破産管財(整理解雇事件などでも)では,会社の決算書数期を並べて,PL,BS,CFなどを分析し,粉飾決算や,逆粉飾決算(計画倒産の場合など)がないか,数年単位でのお金の流れを追い,総勘定元帳を参照して,個別取引と仕訳をチェックしていく。 今回読んだ本は至る所で興味深かったが,特に改めて納得してしまったのが冒頭の一節だ。 「さて,会計の説明に入る前に,ここで最近の実務レベルの会計に欠かせない留意点をあらかじめ申し上げておく。一言でいえば,最近の会計実務では会計処理以前の対応として,前提条件とも言うべき『取引自体の合理性』(例えば,会社のためになっていると言えるのか)の検討が非常に重要になってきたということである。これは,コーポレート・ガバナンスとの関係で言えば『取引自体の合理性』についてステーク・ホルダーに説明可能であるか等,経営者が説明責任を果たすことが求められていることによるものである。」 これを、ごくごく初歩的な事例にたとえると,新株発行で得た資金(自己資本)と,短期社債(流動負債)で集めた資金を, 怪しげな人物に貸してしまった(流動資産)とする。 最初の一年は利息が10%入ってきたとする。 貸借対照表上は自己資本・流動負債と流動資産とかバランスするし, 損益計算書上もきちんと利益が出ていることになる。 しかし取引そのものが不合理であれば,この不合理な取引を隠すために,やがてこの貸付金の実際の価値に関する評価をめぐって粉飾決算に手を染めていくということもあろう。 旧長銀事件は、要するに関連ノンバンク等に対する 貸付金の資産査定をめぐって、より厳格に 査定しなければならないとする 新基準に従わなかったことが、虚偽記載有価証券報告書提出罪及び違法配当罪に該当するとして起訴された事例( 結論は無罪)だ。 これも結局、突き詰めていくと、そんな所に、そんな調査で 、そんな金貸しちゃっていいのかよ、 と言うシンプルな問題な気がする。 『取引自体の合理性』の検討が非常に重要とい