グレーへの対応(読書日記~医療ヘルスケアの法務他)
グレーへの対応(読書日記~医療ヘルスケアの法務他)
医療行為としてどこまでが許されどこまでが禁止されるか?
医療機関の付随的行為として どこまでが許されどこまでが禁止されるか?
医薬品、医療機器、健康食品等を扱うにあたってどこまでの表示が許されどこまでの表示が禁止されるか?
白と黒が はっきりしている事例はとてもわかりやすい。
しかしこの問題の厄介なところは、 広大なグレーの領域が存在する点にあり、 そのグレーの 領域も白に近いグレーから 黒に近いグレーまで濃淡がある。
しかも事例によっては 白か黒かが 最高裁まで争われて初めて決着する場合もある(例えば 医薬品の店舗販売業者に対し インターネットでの販売を 一律に禁止した薬事法施行規則が、 新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効とされた 最高裁平成25年1月11日第二小法廷判決)。
さてこの問題、弁護士としては、はっきり白とわかっていることを白ということ、はっきり黒とわかっていることを黒ということは容易い。
しかし、弁護士が扱う法律相談の大半は、グレーであるけれどもやりたいというものだ。
この時リスクがあるからやめておいたほうが良い、というのは非常に簡単だけれども、それでは依頼者が貴重なビジネスチャンスを逸することになってしまう。
したがって、この分野における法律相談の核心( 決してこの分野に限られるわけではないが)は、想定されるリスクの内容をできる限り事前に定量的に見積もることで、リスクテイクの判断材料を提供することにある。
また、法的リスクの程度によっては途中撤退も想定されるべきであり、どこで退くか、すなわち行政指導を受けた段階で 撤退をするのか、 はたまた上記最高裁判例のように、 最高裁まで争うことを覚悟するのか?
この辺りも法的リスクと経営判断のせめぎあいになる。
白と黒とグレーの判断だけではなく、グレーの濃淡の程度とその帰結を 曖昧な中、できる限り明確にできるよう、 研鑽を惜しんではならないと思う。