顧問弁護士の仕事① 〜悩みどころを捉える〜

顧問弁護士の仕事①
〜悩みどころを捉える〜

まず、日常的な法律相談に迅速に対応することが基本的な業務となる。

顧問先からのご相談は、クライアントの要望に合わせ、面談、訪問、電話、メールやLINE、Messenger、 Skype や Google slack、 Microsoftteams などを使い、柔軟にこれを行っている。

毎日顧問先から様々な法律相談が寄せられるが、 弁護士の回答は大きく分けると三つである。

① 法的に可能である。
② 法的に不可能である。
③ 法的にグレーである。

取引先、従業員、銀行、株主などに対している経営者あるいは総務法務部門の担当者は、常に多忙であり、

①法的に可能であること。
②法的に不可能であること。

の判断について、いちいち時間をかけて考えたり、あれこれ思い悩んだりすることは、ストレスであろうし、 その労力は本業に振り向けた方がより企業経営として合理的であると思う。

そんな時顧問弁護士に電話やメール、LINE、Messengerで さっと相談し、 さっと答えが返ってきたら、 時間の節約にもなるし余計なストレスを抱え込むことも 減るように思う。

実は相談の6割ぐらいはこういう形で投げられたボールを,さっと打ち返す形で対応が 終了する。
当然であるがここでは条文判例文献などを明確に示し、 出来る限りわかりやすく根拠を伝えるように心がけている。

この「打ち返し」は 最近はメールやLINEで パッと回答することを希望される クライアントが多い。 根拠条文や文献の写メあるいは 所管官庁の URL などを貼り付けることもできるからだ。
この「根拠」を示すことが重要であり,これによって例えば相談者が社長に報告する際,また社長が取引先等に回答する際に,格段に報告・回答がしやすくなるように思う。
「ご懸念はごもっともですが,法的には,このとおり問題ありません。」
「お気持ちは分かりますが,それをやってしまうと,このとおり脱法行為になってしまいます。」などなど。


次に問題となるのは、
③ 法的にグレーな場合である。

グレーでも白に近いグレーから黒に近いグレーまでその濃淡は千差万別である。
黒に近いグレーと思われても裁判で争った結果ひっくり返ることもある。

「その業務」を行って収益を上げることが許されるのか禁止されるのかについては、 刺青師をめぐる医師法違反被告事件で第1審大阪地裁と控訴審大阪高裁の判断が真逆になったことは記憶に新しい。

裁判は、同じ事実同じ証拠で一審判決と控訴審判決が全く逆の結論になることもあり得る。

しかしビジネスというものは往々として、 法的にグレーだけれども(つまり、通るか通らないかは裁判やってみないとわからないけれども)、チャレンジしたい ということが多く、そこにチャンスが存在することが多い。

この場合、必要になるのは、 ただ法的にグレーというのではなく グレーの濃淡と法的リスクの幅を出来る限り見積もることである。

ここで顧問弁護士が、濃淡と幅を見積もらず、法的リスクを言い募るばかりでは「コンプライアンスがジョブストッパー」になってしまう。

ここが実は最も困難なのだけれどもその分やりがいがある。

例えば、新たなチャレンジにそれほどの資金や労力を必要としないのであれば、 法的にグレーであっても,チャレンジした上でダメだったら撤退するという判断もあり得る。
一方で、新たなチャレンジに多額の資金や労力を必要とする場合、 最終的に裁判をやりきった結果ダメだった場合の 損害は取り返しがつかないこともあり得る。
この場合、法的に問題ないことが 確認されない限りチャレンジをしないという選択も十分に考慮に値する。

グレーへの対応の場合、顧問弁護士の役割は,経営参謀に近いものになる。

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