ワインを飲みつつ法を思う③〜保護による品質保持と自由による創造性の発露〜
ワインを飲みつつ法を思う③ 初めてSine Qua Nonワインを飲んだ時、 この世の中にはこんな旨い酒があるのだと、心の底から驚いた。 (ラトラパンテグルナッシュ2012/山猫軒にて) ラテン語で「不可欠なもの」を 意味するこのワインに触れると、「ワインとは何か」という そもそもに疑問に 向き合わざるを得ないような気にさせられる。 最近仕事で必要があって、TRIPS 協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)を 読んでいたら、 ワインの原産地呼称保護に関する 規定を見つけ、 ワイン生産国のその 原産地呼称保護に関する情熱の深さを思わずにはいられなかった。 「第23条 ぶどう酒及び蒸留酒の地理的表示の追加的保護 (1) 加盟国は,利害関係を有する者に対し,真正の原産地が表示される場合又は地理的表示が翻訳された上で使用される場合若しくは「種類(kind)」,「型(type)」,「様式(style)」,「模造品(imitation)」等の表現を伴う場合においても,ぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示が当該地理的表示によって表示されている場所を原産地としないぶどう酒又は蒸留酒に使用されることを防止するための法的手段を確保する。」 この TRIPS 協定は、 特定の地域のぶどう酒の地理的表示の保護を、 その場所を原産地としないぶどう酒に使用されることを防止するに留まる。例えば、 日本の北海道産ワインに「マルゴー」と名付けたり、 ポルトガル産ワインに「山梨」と 名付けたりすることが禁止されるに留まり、 スペイン産の香水に「マルゴー」や「山梨」 と名付けることが禁止されるわけではない。 その意味で TRIPS 協定の上記規定は、 指定商品や指定役務に関する 商標権が保護される商標法と発想は同一であると考えられ 理解しやすい。 しかしフランスにおいては この地理的表示の保護は、 ワインの地理的表示をワインとして保護する範囲を超えている 。例えばイブサンローランが 香水にChampagne という名を付けた事例でを付けた事例で、 イヴサンローランは裁判の結果敗訴し、 名称変更を余儀なくされている。 原産地保護は確かに、 ワインの品質を維持し優れた生産者の情熱を 保護する効果がある。 日本においても「山梨」 というワインの地理的