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裁断された本と「カラオケ法理」

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裁断された本と「カラオケ法理」 担当している事件に必要な文献として、必要に迫られて、「標準 整形外科学」(第12版)を購入した。 ざっくりと概要が分かれば良いということで、ひとつ前の版の「中古」を買った。 ひとつ前の版の中でも、最も安価だったのが、裁断された本だったので、その裁断された本を買った。 持ち主が、なぜ裁断したか? おそらく、本を裁断した上、スキャナーで取り込んで文字認識をかけ、「ワード」を入力すると本の該当ページがヒットするようにしたのだろう。 この裁断された本を見て、すぐに想起される裁判例がある。 いわゆる「自炊代行サービス事件」(知財高裁平成26年10月22日判時2246号92頁)である。 書籍のスキャナは、「複製」に該当するため、著作権者の承諾を得ずに書籍をスキャナで取り込めば、複製権侵害(著作権法21条)となる。 しかし、個人が私的利用の範囲内で複製した場合、原則として複製権侵害には該当しない(著作権法30条)。 では、個人が私的に利用するために、本の裁断とスキャナを業者に依頼した場合はどうなるのであろうか? この点が問題となったのが、上記「自炊代行サービス事件」である。 同裁判例は 「独立した事業者として、営利を目的として本件サービス内容を自ら決定し、スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で、インターネットで宣伝広告を行うことにより、不特定多数の一般顧客である利用者を誘因し、その管理・支配の下で、利用者から送付された書籍を裁断し、スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し、当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し、利用者から対価を得る本件サービスを行っている。」 とした上で、業者は、 「利用者と対等な契約主体であり、営利を目的とする独立した事業主体として、本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから、本件サービスにおける複製行為の主体である。」 と判断している。 「自炊」をしたければ、自分でやるべし、という当たり前の判断である。 さて、この議論、古くは「カラオケ法理」として発展してきたものである。 著作権法38条1項は、営利を目的としない演奏(歌唱を含む)は、著作権侵害としないと規定されているため、カラオケ装置を設置したスナックにおい

モーツァルト「魔笛」(新国立劇場)

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モーツァルト「魔笛」(新国立劇場) 新国立劇場は、 昨年までの飯守泰次郎オペラ芸術監督が退任され、 2018/2019年は、 大野和士 オペラ芸術監督を迎え シーズンを開幕する。 シーズン最初の演目は、新制作のモーツァルト「魔笛」である。 新国立劇場の賛助会員ということで、 シーズン開幕に先立って舞台稽古(ゲネプロ)を見学してきた。 シーズン開幕前、新制作の舞台稽古見学ということで、 内容について 書くことはしない。 そこでモーツァルトの「魔笛」に ついての個人的な 思いを少し記すことにする。 モーツァルトの 魔笛を最初に見たのは、 新婚旅行である。場所はウィーンフォルクスオーパー。 あの頃はお互いお金がなかったから、 ウィーンプラハに行ったものの、 食事は閉店間際のピザ屋の売れ残りを 半額で買ってホテルで食べる。 ウィーン国立歌劇場のチケットはとても高くて買えなかったため、 民衆劇場を意味するフォルクスオーパーで 魔笛を見た。 その時の演出は極めてオーソドックスそして絵画的なものであり、 親しみやすいものだった。 しかし結論から言ってしまえば、 魔笛の世界観は 好きになれない。 フリーメイソンの影響が強く出てるとか、 ザラストロ性善説での演出、 ザラストロ性悪説など、 とにかくいろいろ語られている。 しかし 素晴らしい音楽に乗って語られるストーリーには、 どうしても「啓蒙的な臭い」を感じてしまい、 音楽の美に 精神を 委ねることができないのだ。